今日珈琲たっぷり淹れて
ゆっくりじっくり、読みました☕️
えーえんとくちから
笹井宏之
ちくま文庫 680円
笹井宏之。
身体表現性障害。
ほぼ寝たきり。
遠くに恋人が住んでいる。
月にいちど会えるか会えないか。
お互い遠くにいるからこそ、研ぎ澄まされる感覚がある。
おはようの色や匂い。
おやすみの色や匂い。
『短歌をかくことで、ぼくは遠い異国を旅し、知らない音楽を聴き、どこにも存在しない風景を眺めることができます。
あるときは鳥となり、けものとなり、風や水や、大地そのものとなって、あらゆる事象とことばを交わすことができるのです。』
彗星のように短歌界に現れ、2009年に26歳で亡くなった著者。
透明でやさしく、繊細にして鋭敏な数々の短歌。
未発表の短いエッセイ。
未発表の俳句。
そのどれも心にスーっと入って粉末ジュースのように溶けてしまう。
これは蔵書行きだな。
********
短歌、少し紹介。
半袖のシャツ 夏 オペラグラスからみえるすべてのものに拍手を
悲しみでみたされているバルーンを ごめん、あなたの空に置いたの
寒いねと言ふとき君はあっさりと北極熊の目をしてみせる
戦争が優しい雨に変わったらあなたのそばで爪を切りたい
掘り下げてゆけばあなたは水脈でわたしの庭へつながっていた
祝祭のしずかなおわり ひとはみな脆いうつわであるということ
*********
(俳句)
ひまわりの首をつかんで泣きました
死ぬために夜の樹を抱くあぶらぜみ
八月の私へそっと置き手紙