ムウアロハ 手仕事の日々

オリジナルボディワーク。からだとこころを施す手仕事。

奈良びと

私も妹も奈良ファンクラブに入っています。

 

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https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/fanclub/

 

 

 

妹が好きな作家、上野誠さん

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NHK「100分で名著」で紹介された奈良の本を、妹が図書館で借りてきました。

 

 

奈良について何も知らなかったんだー、と。

面白い!!!

 

 

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『プロローグ』より

 

奈良を旅する人は奈良駅に(JR奈良駅でも、近鉄奈良駅でもよいのだが)降り立つと、まずビックリする。

 

これで県庁所在地の駅なのだろうか。

ほんとうに30万人都市の駅前なのかと、あきれる人も多い。

デパート一つあるわけでもないからだ。

 

あまりにも、街が小さいのである。

 

そんな戸惑いを隠せないでいる旅行者に対して、私は次のように言うことにしている。

 

『驚かれましたか? 駅から30分も歩くと、春日の原始林ですからね。

なぜこんなにも市街地が発展していないのか、お話しましょう。

 

奈良の真ん中の一番広いところは平城宮跡で、そこにビルは建てられませんからね。

JR近鉄奈良駅と大和西大寺に分断されています。

 

つまり市街地が平城宮跡を取り囲みつつ、鉄道も道路もそこを迂回しているわけだから、奈良の市街地は大きくなりようがないのです。

 

奈良で一番良い土地は、千三百年前に宮殿の敷地になってしまったのです。

〝偉大なる空洞″です。

 

ですから、奈良の人は、ちょっとした買い物をする時は、大阪か京都に出ます。

そこに奈良という街の悩みもあるんですね。

 

でも、別の見方をする人もいて、都市機能をみんな大阪と京都に押し付けて、奈良は無理せず、悠々自適に生きている街だ、なんて言う人もいます。ここは意見が別れるところでしょう。』

 

 

奈良という街はひとことで言えば中心部に巨大な空洞を持つ街。

 

いわば苦渋の決断をして、この空洞を残してきたのです。

 

 

『ミチ、ミヤ、ミヤコ』

 

『奈良に都がやってきた』

 

『〝奈良びと″の誕生』

 

『ミヤコとヒナの感覚』

 

『半官半農の貴族たち、官人たち』

 

『女性・労働・地方』

 

『平城京の庭を覗く』

 

『渡来の僧・鑑真物語』

 

 

『エピローグ』

この街の人びとは、この空洞を後世に残すことを決めた。

それは「鹿と共生することを決めた決断」とも言えます。

 

奈良の守り神、春日の山の伐採をせず、原始林を残し、春日の神の使いである鹿とともに生きることを選んだこの街の人びと。

 

ために、奈良は世界で唯一、人になついた鹿のいる街となり、原始林のある三十八万人都市となった。

 

 

🦌鹿が下草や芽を食べ、フンで芝を育てるので、奈良県庁の予算に奈良公園の管理費は入っていない、ゼロなのです。

膨大なお金がかかる奈良公園の管理は全て鹿がやってくれるのです)

 

 

 

 

【鳥瞰図】

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大和三山

東 :  香具山

西 :  畝傍山

北 :  耳成山

 

 

目次

 

プロローグ

ウネメハヤミミハヤ、ウネビハヤミミハヤ

 

『壺の中の銅銭と水晶』

 

『三山鎮護の思想』

 

『中大兄の三山の歌』

 

『香具山西麓の森と泉の物語』

 

『香具山と時間の発見』

 

エピローグ

 

 

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上野さんはこう書いている

 

私は文献に残る権力者の奈良びとではなく、大勢の市井の人びと、平城京に住む人にしかわからない感覚のごときものを描きだしたかったのです。

 

 

奈良の人の気質として

人間関係において突出することを好まず、人との和を大切にして、その中に浸って生きようとする。

だから奈良の人は、会議が下手だ。

 

外から見ると無気力かつ現状肯定的に惰性に流されているようにさえ見えることがある。

 

しかしそれには理由があって、奈良の人びとは、『今あるものを後世にどう伝えようか』を第一に考えるから、大きな変化を望まないのである。

 

と同時に、自分たちにできることの限界を知っているから、決して無理をしない。

 

『平城宮』『原始林』『鹿の遊ぶ公園』『古代建築』『仏像』

それらを、自分たちがいなくなったあともどう後世に伝えようか、それを第一に考えている。

 

奈良の人びとが変革を求める時、それは、自分たちが変化しなければ、これらの大事なものが後世に伝わらなくなる恐れのある時だけだ。

 

 

出会った多くの奈良の僧侶は、今と自分を中心に、過去の百年と未来の百年のことを第一に考えている。

 

明治の大修理の次は、平成の大修理。

そして次は・・。

 

商売人たちは、無理をすることを嫌う。

お金がない時は、それなりに質素に生活すればよいという考え方で商売しているから、商売気がまったくない。

(日没とともに店が閉まる奈良、と言われる)

 

奈良の商売人が気にしているのは、売上の方ではなくて、資産価値の方である。

だから資産の価値が減じないように系えいをしようとする。

 

売り上げが減っては困るが、経営を拡大して失敗することの方を恐れる。

親から受け継いだ資産を守るために、今どうしたら良いか。それを考えるのである。

 

 

『大阪の喰い倒れ』

『京の着倒れ』

 

奈良は家の普請にお金をかけ百年も二百年も住もうとする『建て倒れ』、

そして何もしないで生きていけることが一番だと考える『寝倒れ』。

 

また、15分程度の遅刻は、遅刻とみなさない『大和時間(ヤマトタイム)』というのもある。

無理をしない、急がない。事故なく目的地に着くことを選択する気質。

 

大阪の友人が奈良の人が歩いてるのを見ると遅さにイライラする、とぼやく(笑)

 

とても不思議な平城京文化論。

 

 

 

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🌕この本が書かれたのは2010年。

その後インバウンドで外国人がたくさん奈良を訪れ、東京や外国からも店や企業が奈良に進出した。

その数は今うなぎのぼりだそう。

 

なので本に書かれた奈良は今後少しずつ薄らいでいくのかもしれないな、と思いました。

 

それでも奈良という街は、これからも、春日の原始林を守り、鹿を遊ばせ、千三百年の建物を守ってゆくのだろう。

 

 

猫は奈良っぽいのかも

『寝倒れ』(笑)

 

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